らしさとは?を楽しく学ぶ

ウル虎の巻

-エルくんに相談シリーズ 弐の巻-いいジャムを作ってるのに、なぜ選ばれないんでしょう

リンゴ・桃農家、甘井さんのモヤモヤ、エルくんに相談。

道の駅など店頭の棚に並べると、隣のジャムと見分けがつかない。ECを始めてみたけれど、何を書けばいいかわからない。就農15年、こだわりの農家・甘井さんのモヤモヤを、エルくんに聞いてもらうことにしました。

今回の相談者

「いいものを作ってるはず。なのに。」

甘井 林檎さん(33歳)のリンゴ・桃農園は、長野市近郊の小さな農家だ。就農して15年、6次産業化でジャムやジュースも作るようになって5年。直売所にも出しているし、ECサイトも立ち上げた。

土へのこだわりは誰にも負けないと思っている。農薬をできるだけ減らして、時間をかけて育てる。完成したジャムを瓶に詰めるとき、「これは本当においしい」と毎回思う。

でも、道の駅など店頭に並べると、隣のジャムと区別がつかない。値段を少し上げたら売れなくなった。ECも始めたが、商品説明に何を書けばいいのかわからず、「無農薬・手作り」と書くだけで止まっている。

「伝わっていないのはわかってる。でも何を変えたらいいのか……」

エルくん、甘井さんの相談を受ける

甘井さん
甘井さん
直売所でジャムを売っているんですが、なかなか手に取ってもらえなくて。ラベルのデザインを変えたらいいかなと思って来ました
エルくん
エルくん
ではさっそくラベルをかわいくするでござる!イチゴ色とかフルーツっぽい色で——
舵取社長
舵取社長
待て
エルくん
エルくん
し、社長…!?
舵取社長
舵取社長
エル、それより先に聞くことがあるだろう。甘井さん、今一番困っていることを聞かせてもらえますか
甘井さん
甘井さん
ラベルを新しくすれば変わるのかなとは思っているんですが、正直それでいいのかよくわからなくて。他の農家さんと並んだとき、うちのジャムが埋もれてしまうんですよね

「隣の農家と何が違うんですか」

ホウホウ長老
ホウホウ長老
なにやら難しい顔をしておるな
エルくん
エルくん
甘井さんが、直売所で隣のジャムと区別がつかなくて困っておられるでござる。ラベルを変えようとしたら社長に止められたでござる…
ホウホウ長老
ホウホウ長老
ふむ。甘井さん、なぜ農薬を減らして育てているのですか?
甘井さん
甘井さん
食べてくれる人に安心してほしいのもありますけど、その方が土がよくなるんです。農薬を使うと土が痩せていく気がして。15年かけてやっと、自分が納得できる土になってきた感じがあって
ホウホウ長老
ホウホウ長老
その話、ラベルに書いてありますかの?
甘井さん
甘井さん
書いてないです。『無農薬・手作り』とだけ書いていて
エルくん
エルくん
……あ
ホウホウ長老
ホウホウ長老
そういうことじゃ。甘井さんのジャムには、15年かけて育てた土の話がある。でも今のラベルには、その話が一行もない。つまり——
ベイ・ハクライ
ベイ・ハクライ
プロダクトのオリジナリティはソイルマネジメントのフィロソフィーにエンベッドされているのに、パッケージングのナラティブがコモディティレベルにとどまっているのはブランドエクイティのミスアロケーションでごじゃる!

(誰も拾わない)

ホウホウ長老
ホウホウ長老
売っているのはジャムだけど、伝えるべきは『この土から生まれた』という物語、ということかもしれませぬな
甘井さん
甘井さん
物語、ですか。そんな大げさなものじゃないと思ってたんですけど…
ホウホウ長老
ホウホウ長老
大げさではないのじゃ。それがあなたのジャムにしかない"らしさ"じゃ
エルくん
エルくん
『無農薬・手作り』はどこにでも書いてある言葉でござるが、『15年かけて育てた土から』は甘井さんにしか書けない言葉でござるな!

「でも、農家にブランディングって関係ありますか」

甘井さん
甘井さん
ブランディングって、大きな会社がやるものじゃないですか。農家の私がやっても、大げさな感じがして
エルくん
エルくん
農家さんにはブランディングは必要ないでござる!畑と土さえよければ——
舵取社長
舵取社長
逆だ
エルくん
エルくん
ぎゃ、逆でござるな…!
ホウホウ長老
ホウホウ長老
甘井さん、一つ聞かせてほしいのじゃ。甘井さんのジャムを気に入って、毎年買いに来てくれるお客さんはおられますか?
甘井さん
甘井さん
います。直売所で顔を覚えてくれて、『今年も来たよ』って言ってくださる方が何人か。リンゴの時期になると必ず来る方もいて
ホウホウ長老
ホウホウ長老
その方たちは、なぜ甘井さんから買うのじゃろう?
甘井さん
甘井さん
私の顔を知っているから、かな。どんな畑で作っているかも、話したことがあるので
ホウホウ長老
ホウホウ長老
それじゃよ
エルくん
エルくん
え……それ、でござるか?
ホウホウ長老
ホウホウ長老
その方たちが買っているのは、ジャムではない。甘井さんの畑の話と、15年の積み重ねと、あなたの顔じゃ。ブランディングとは、その『顔』を知らない人にも届けることなのじゃ
甘井さん
甘井さん
知らない人にも、届けられるんですか
ホウホウ長老
ホウホウ長老
そういうことじゃ。あなたの"らしさ"はすでにある。ただ、まだ知らない人に届く言葉になっていなかっただけじゃ
エルくん
エルくん
"らしさ"って、作るんじゃなくて、すでにあるものを見つけて、届けるものでござるな
舵取社長
舵取社長
そうだ
エルくん
エルくん
甘井さん、一緒に見つけていくでござる!
甘井さん
甘井さん
はい!よろしくお願いします

帰り道、畑に寄り道した。

打ち合わせの帰り、甘井さんはそのまま家に帰らず、畑に寄った。夕方の光の中で、リンゴの木が静かに並んでいる。

ラベルのデザインを変えれば変わると思っていた。でも、そういうことじゃなかったのかもしれない。毎年来てくれるお客さんと話すとき、自然と畑の話になる。この土のこと、今年の天気のこと、収穫までに苦労したこと。あの会話の中に、全部あったのかもしれない。

伝えてなかっただけか。この畑のこと。

15年かけて作ってきたものが、まだ言葉になっていなかっただけだと思ったら、木の根元の土が少し違って見えた気がした。

「あなたの農園にしかない物語が、誰かに届く」ために

店頭の棚に並ぶ無数のジャムを前に、どれを手に取ればいいかわからない——そんな経験をしたことがある方は多いはずです。作り手の側も、「うちは特別なことをしていないので」とおっしゃる方がほとんどです。

でも、15年かけて育てた土のこと、こだわりの栽培方法、毎年リピートしてくれるお客さんとの会話——それは、あなたの農園にしかない"らしさ"です。

伝えたいことが言葉にならなくていい。一緒に整理することができます。あなたの"らしさ"は、知らない人にも届けられる言葉にできます。

よくある質問

農家やジャム・ジュースのような食品にもブランディングは必要ですか?
むしろ、食品こそブランディングが効きやすい分野です。中身が似ていても、誰が・どんな土地で・どんな思いで作ったかを伝えることで、価格競争から抜け出すことができます。
「無農薬・手作り」以外に何を伝えればいいかわかりません。
その言葉の「裏にある理由」が伝わっていないことがほとんどです。なぜ無農薬にこだわるのか、手作りにどんな意味があるのか——そこに、あなたにしか書けない言葉があります。
小さな農家でもエルに相談できますか?
もちろんです。規模に関わらず、「伝えたいことがある」方のお手伝いをしています。まずはお気軽にご連絡ください。

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制作・監修

デザインスタジオ・エル

ブランディングデザイン会社|長野

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