らしさとは?を楽しく学ぶ

-番外編 弐-今日の社長、なんかおかしい。
社長がぼーっとしている。これは異常事態だ。
事務所に、珍しく静かな午後が訪れていた。
締め切りもない。クライアントの電話もない。エルくんはコーヒーを淹れて、さて今日はゆっくりするかと思っていた。
そのとき気づいた。舵取社長が、窓の外を見ている。何も言わず、ただぼんやりと外を見ている。珍しい。というか、異常だ。
エルくん
そうか、じゃないでござる。社長がぼーっとしてたら、こっちが不安でござる…
舵取社長
オレがこの仕事を始めたころ、インターネットに繋ぐのに電話回線を使ってた
舵取社長
夜11時になると、テレホーダイって言ってな。定額で繋ぎ放題になるんだ。それまではダイヤルアップで、繋いでる間は電話が使えない
舵取社長
ISDNってのもあった。デジタル回線でな、当時は最先端だった。今じゃ誰も使ってないが
ベイ・ハクライ
ナロウバンドからブロードバンドへのトランジションがコネクティビティのデモクラタイゼーションをアクセラレートしたことはインダストリーのファンダメンタルズとして——
(誰も拾わない)
舵取社長
テーブルレイアウトで組んでた時代もあったな。spacer.gifって知ってるか
舵取社長
1ピクセルの透明な画像を引き伸ばして、余白を作ってたんだ
舵取社長
作ってた。Flashが全盛のころは、サイト全部をFlashで作るのが当たり前だった。あのころFlashで派手なものを作ってた連中(同志)は、時代の変化にもくじけずがんばっている
舵取社長
ブログが出てきたとき、素人がWebで発信できるようになると思って、正直驚いた。トラックバックって機能があってな、他の人のブログに繋がれるんだ。あのころはWeb全体が地続きになっていく感覚があった
舵取社長
SNSが来て、モバイルが来て、スマホが来て。そのたびに"これで全部変わる"って言われた。実際、全部変わった
舵取社長
SEOが出てきたとき、キーワードを詰め込めば上に出るって時代があった。今それをやると逆にペナルティになる。正しいことが変わっていく
ホウホウ長老
時代は変われど、人が何かを伝えたいという欲求は変わらぬのじゃ。技術はその手段に過ぎん
舵取社長
今はAIが来た。またこれで全部変わるって言われてる
舵取社長
伝えたいことがある人間がいて、それを受け取りたい人間がいる。それだけは変わってない。テレホーダイのころも、今も
しばらくして、社長は立ち上がった。 「少し歩いてくる」 それだけ言って、出ていった。
夕方、コンビニの前でエルくんは社長とばったり遭遇した。エルくんの手にはプリンが一個。社長の手にも、プリンが一個。
翌朝、社長はいつも通りだった。短く、強く、現実的に。エルくんはそれにほっとしながら、昨日の話をなんとなく反芻していた。
技術は変わる。ツールも変わる。でも、伝えたいことがある人と、それを受け取りたい人がいる限り、この仕事はなくならない。そんな当たり前のことを、社長は昨日ひとりで確認していたのかもしれない。
いつも短い社長が、あの日だけ長く話した理由を、エルくんはまだ聞けていない。たぶん、一生聞けない気がする。
それでいいと思っている。
記事一覧へ
制作・監修
デザインスタジオ・エル
ブランディングデザイン会社|長野
デザインスタジオ・エルは「超えるをつくる」を合言葉に「らしさ」をかたちにする、ブランディングデザインの会社です。
Webサイト制作やグラフィックデザイン、企業理念やキャッチコピーのご依頼やご相談がございましたら、お気軽にお問い合わせください。
デザインスタジオ・エルのブランディング事例はこちら

©DESIGN STUDIO L.