早気と私
実家の部屋を片付けていたら、高校時代の弓道ノートがでてきました。入部以来3年間全ての矢数、的中数、的中率、大会の記録など記されていて…このノートは自主的につけていたもので、誰もこういった記録はつけてなかったし、僕自身このノートの存在は誰にも明かさなかったと記憶してます。数字を記録したがる執着心は、昔から変わっていないなぁ…と苦笑いしつつ、25年ぶりに食い入るように見返したのですが、一番自分を褒めてあげられるのは一度も部活休んでいなかったこと。情けないのは、初当たりからわずか3ヶ月後にすでに早気(はやけ)になっていたこと。
弓道には射法八節というものがあり、そのうち弓を引ききった状態で矢を放つタイミングを待つ「会」という段階があるのですが、早気とは会をしっかり保持できず矢を放ってしまう症状です。僕の場合当たりが出始めると気持ちが的中に意識がいってしまい早気にしょっちゅうなっていました。感想欄には圧倒的に「早気」の文字が並んでました。おそらくノートの記録をつけていることでより点取り思考になってしまい、結果早気を助長していたと思います。当たる→早気→当たらなくなる、というサイクルが面白いように繰り返されてます。
弓道は「心技体」が重要で、早気はこころの問題です。早気を直すには「当てたいという気持ちを捨て、射法八節という「型」にこだわる」しかないとのことですが、なかなかうまくはいきませんでした。結局3年間早気に悩まされ続けたものの、早気な性格であるのだと自覚したとき、それとどう向き合うかを知ることができる機会でした。いまだに仕事のいたるところで、これは早気だなぁと思う瞬間はあります。しかし、そういうのも含めて、結局は自分との戦いであるというところが、弓道を通じて学んだことだなと思っています。
数字にとらわれると、成果を出そうと焦ってしまいタイミングを待てず、結果的に思うような成果が出せない、ということは仕事でもいえるかもしれません。「道」はいろいろなことを教えてくれます。
そういえば、NHKの弓道アニメ『ツルネ ―風舞高校弓道部―』は終わってしまいましたが、とても楽しかったです。弓道知らなかった妻もすごく興味を持って鑑賞していて、どうして早気になるのか、という冷や汗な質問を浴びました。よくわかるので、饒舌になっちゃいました。「ツルネ」の射型も、弦音も、的に矢が当たる音も、すべてが美しかったです。