らしさとは?を楽しく学ぶ
エルくん、はじめてのひとりヒアリング。
エルくんは巻き物を開いた。明日ははじめて一人でヒアリングに行く。社長に突然言われた。「雑貨店のオーナーさんだ。Webサイトを作りたいらしい。一人で行ってこい」。アドバイスはなく、その一言だけだった。
硯を出して墨を磨り始め、これまで言われたことを書き出した。
「まず聞く。提案は後。」
「らしさは、相手の中にある。」
「作る前に、聞くことがある。」
書いているうちに、自分がいつもどうしていたかを思い出した。お客さんの話を半分聞いたところで「それならこうすれば!」と前のめりになってしまう。社長に何度止められたかわからない。明日は社長はいない。明日こそ、ちゃんと聞くでござる!巻き物を閉じて、プリンを食べた。
翌朝、エルくんは路地の奥にある小さな雑貨店の前に立った。ショーウィンドウには、手作りのアクセサリーが並んでいる。センスがある。でも、どういうお店なのかは、外からだとよくわからない。深呼吸して、扉を開けた。オーナーの阿久瀬サリーさん(35)がお店の奥から出てきて、「どうぞ」と椅子を勧めてくれた。エルくんは椅子の上に正座して、巻き物を開いて筆を握りしめた。
まず聞く。提案は後。
自分でも驚くくらい、ちゃんと言えた。
エルくんは、筆を持った手が止まった。
これだ。これがこのお店のらしさだ。
言いかけて、止まった。
提案は後。もう少し聞く。
エルくんは、さらに巻き物に書き留めた。「ものじゃなくて、話ごと買う」。
それだ。
エルくんは「では、SNSで——」と言いかけた。ぐっとこらえた。「では、まずページを——」と言いかけた。またこらえた。
そこからしばらく、話は続いた。お店の棚の配置のこと、常連さんとのやりとりのこと、去年行ったインドの市場のこと。エルくんはほとんど喋らず、ただ聞いていた。巻き物はどんどん伸びていった。気づいたら、1時間が経っていた。
帰り道、巻き物を開いた。今日聞いたことをあらためて書き出していくと、このお店のことがだんだん見えてきた。産地に行く。作り手の顔を見てから買う。ものじゃなくて、話ごと伝える。遠くからわざわざ来てもらえるお店にしたい。
これ、全部つながってるでござるな。
Webサイトに何を書くべきか、なんとなくわかってきた気がした。でもそれより、聞いていてお店のことが好きになっていった、という感覚の方が強かった。
「むずかしいけど、おもしろいでござるな」
事務所に戻ると、社長がデスクで書類を見ていた。
それだけだった。でもなぜか、少し背中を押してもらえた気がした。
その夜、エルくんはもう一度巻き物を開いた。今日書いたことの下に、一行付け足した。
「聞くって、相手のことが好きになることかもしれない」
明日またがんばろうと思った。
デザインスタジオ・エルは「超えるをつくる」を合言葉に「らしさ」をかたちにする、ブランディングデザインの会社です。
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