坂の上の雲
「まことに小さな国が、開化期を迎えようとしている。」
NHKで2009年から2011年までの足かけ3年にわたって計13話放送されたドラマ『坂の上の雲』。当時、それほど歴史に興味がなく、断片的にかじって観たぐらいだったのですが、幕末史と昭和史の通史を勉強したら俄然目を凝らして観たくなって、U-NEXTで全話一気に鑑賞しました。いやぁ…ほんとすごいドラマ。全話通して一瞬たりとも画面から目をそらすことはありませんでした。たぶんこれ、一番です。僕のなかで。”痛々しいばかりの昂揚”のなか、国の存亡がかかった試練のなかから雲をつかみ、しかし戦いのあと「これから日本はどうなるのだろう」と漏らす。その後の日本の歴史が悲しい時代を迎えることは誰もが知っています。ゆえに幕末と昭和史の間に挟まれたこの時代をちゃんと理解することは、すごく意義深いものだなと思いました。
作者の司馬遼太郎いわく、明治維新~日露戦争までの30年間はオプティミズムな時代であったといいます。この時代を、どのように描いたのか。こう記されています。
坂の上の雲 – Wikipediaより
司馬は本作において、明治維新から日露戦争までの三十余年を「これほど楽天的な時代はない」と評している。近代化によって日本史上初めて国民国家が成立し、「庶民が国家というものにはじめて参加しえた集団的感動の時代」の中、秋山兄弟や子規に代表される若者達は新興国家の成長期に青春時代を送り、「個人の栄達が国家の利益と合致する昂揚の時代」に自らが国家を担う気概を持ち、その意識を疑うこともなく政治・軍事・学問など各々の専門分野において邁進したと述べている。タイトルの『坂の上の雲』とは坂の上の天に輝く雲を目指して一心に歩むが如き当時の時代的昂揚感を表したもので、日露戦争とは官から民の端々までがそういった「国家が至上の正義でありロマンティシズムの源泉であった時代」の情熱の下に一体となって遂行された国民戦争であり、「国家の重さに対する無邪気な随従心をもった時代におこなわれ、その随従心の上にのみ成立した」としている。また、本作の舞台となる日清・日露戦争期は戦争が多分に愛国的感情の発露として考えられており、帝国主義が悪であるという国際常識が無く、そうした価値観が後世とはまったく異なっていたことに留意するよう繰り返し著している。
国家ができ、新しい組織ができていく過程は、そのまま企業にも置き換えて考えることもできるでしょう。個の力を結集して強い組織がつくられていく。ビジネスにおおいに役立つと思いますが、とりわけこの時代のリーダーたちは、人の上に立つだけでなく、人の前に立つ人間だった、という印象を持ちました。