ファスト&スロー
ファスト&スロー(上) あなたの意思はどのように決まるか?
人がどのように判断・意思決定し、どのように間違えるかを行動経済学・認知心理学的実験で解明していくという内容で、脳の中にあるふたつのシステム、すなわち「速い思考(システム1)」と「遅い思考(システム2)」をベースに展開されていきます。
システム1は自動的で高速で働き、印象、直感など、自分でコントロールする必要がない思考。システム2は複雑な計算など熟慮が必要なときの思考で、のろくて効率が悪く、怠け者の性質を持つ。どちらも通常オンになっていて、システム1が生み出す思考をシステム2に送り、ゴーサインがでると意志的な行動に変わる。二つのシステムの相互補完によってだいたいの場合はこの流れで自分の思い通りに行動し、うまくいくが、システム1は様々なバイアスによって歪められ、ときに不合理な行動を合理的に行ってしまうことがある。
システム1とシステム2の相互関係を知り、そしていかに人の意思決定がシステム1に制約され、不合理な行動をとってしまうかを理解することができます。実験内容も興味深いものが多く、ページ数と文字の密度のわりには読みやすいです。
人間って常に自分の意思で論理的に意思決定しているのかと思いきや、さにあらず。この本を理解しても、システム1の支配からは逃れられないのだな…と思いますが、システム1とシステム2の相互作用を知り、システム2を起動することでバイアスを察知することはできるはず。たとえばユーザーがモノを買うときの意思決定プロセスを検討するといった場合や、クライアントから受ける第一印象のみで判断してしまうことを避ける…など、大いにこの知識は活かされるはずです。