NoteWebディレクター・ハラヒロシのブログ

thee第10回公演 『白い恋人たち』観劇

長野市の演劇ユニットthee、記念すべき第10回公演 『白い恋人たち』観に行きました@ギャラリー花蔵。

<あらすじ>
ニッポンの奥の奥の、裏の、どこか。稗と粟と麦を育てながら暮らす、小さな小さな集落。その痩せた村で、世間様はとっくに忘れている、不条理極まりない事件があった。昔々の嫌なできごと。
強烈な訛りを剥き出しにしながら、その事件を自主映画として再び蘇らせようと企む村の衆。”おまち”から呼んだ、あの人は今的大女優の身侭な振る舞いによって、その企みも木っ端微塵に吹っ飛び迷走の極み。果たして最期の1シーンを撮り終えることができるのか、村の衆。スカッと爽やか70分の、明るい農村トラジコメディ。

会場に入った瞬間から劇の世界に誘われていました。正面には劇の舞台となる時津村の村章が描かれた村旗。上演前のアナウンスはわざとエコーをかけてゆっくり喋る村内放送風。喫茶(ch.books出張カフェ)で「白い恋人たち」なるオリジナルドリンクを注文してから座席に着くとそこには「広報ときつ」が。いかにもな仕上がりの広報紙を見ているうちに時津村情報がいろいろ刷り込まれ、気分はいつしか集会場に参じた村民です。アイデア満載の仕込み、今回はなんだか、始まる前から楽しいではないか…!

そんななか、過去に起きた事件を題材にした自主映画を企画する村の青年団と、ラストシーンに登場してもらうためにおまちから呼んだかつての銀幕女優が対峙するかたちで、ものがたりが進んでいきます。一見他愛もないような会話、一見くだらないような冗談がキャラクターやシナリオの細やかな設定に少しずつフックして笑いに変わっていく。村人たちの、女優に対する余興のくだりや時津弁などで田舎者コンプレックスが絶妙に表現され、女優は理不尽極まりないワガママで村人を困らせる。ごく短時間でそれぞれのキャラクターの人間性や人間関係がはっきりしていくので、感情移入しやすくなります。
観ているほうがなんとなくそのシチュエーションに落ち着きを感じてきたそんなときに、やっぱり訪れます、theeの悲喜劇マジックが。あれ、いつのまにか緊張感あふれるシリアスな展開になってるんですけど! どんどんと追い詰められていく様が圧巻で、みているこちらも背筋ピーン。だってもう、村人気分で観ているんだから他人事ではないのですよ。そして、『白い恋人たち』のタイトルを噛み締めながら、”最期の1シーン”に向かっていきます。たしかさっきまで笑っていたのに、なにこの戦慄。あんたたち怖すぎるわっ!最初に楽しい感じで臨んだ観劇テンションは、見事に裏切られました。だからこその凄みを感じる劇でした。いやほんとに、このタイトルよかったです。
theeの劇って、スーッと通り過ぎていくのではなくて、あぁ、アノときのアレはコレだったのねという、記憶を手繰り寄せながら噛みしめる感じが楽しい。今回もそういう味がしました。なんというか、旨いです。けっこう注意深く観ているつもりでも、実はまだ自分が気づいていない隠し味があるのではないかと思うので、だからこそクセになるんですよねぇ。
theeの公演はこれで10回。巧妙な脚本と演出、そして個性的な役者さんがその世界観を演じて、theeを作り出していく。それを続けていくことがすごくて、形に残していくということはなんと素晴らしいことか!ということを、感じずにはいられません。
チラシデザイン担当させていただきありがとうございましたー!
※”ちょいちょい物語に絡んでくるコカコーラ”ですが、実はチラシデザインにもちょいちょい反映されてます。