NoteWebディレクター・ハラヒロシのブログ

スポーツアナウンサー 実況の真髄

スポーツアナウンサー 実況の真髄 山本 浩 (著)
元NHKアナウンサー・山本浩氏によるスポーツ実況論。スポーツの名シーンは、アナウンサーの言葉とセットになって自分の記憶に刻まれていることが多いです。ときに瞬時に決まる勝負どころを、場面にふさわしい的確な言葉で表現する仕事、ほんとうにすごいなぁと思います。それぞれのスポーツが持つリズム、戦況、温度などいかにして視聴者に伝えていくかを、アナウンス技術、中継の舞台裏、中継の画面づくりなどさまざまな視点で解説してくれています。
また、過去の名実況を織り交ぜたり、見たくなる試合の条件(期待するドラマの要素)について言及したり、中継が難しい例を出したり(試合自体が盛り上がらないケース)、がっかりしてしまう残念なアナウンスの事例を出したり、実況の魅力と真髄を余すことなく伝えようとする内容はなんともエキサイティング。
「第一球を投げました」
野球の実況のスタートといったらこの言葉ですが、この短いフレーズのなかに、プロのアナウンサーは絶妙の緩急を使うことを知りました。その具体的なテクニックの描写解説には、プロの真髄を感じます。
他におもしろかったところ。
・実況の基本中の基本は、エネルギーのベクトルの変わる瞬間に、ベクトルの起点にことばでピンを打ち続ける
・大相撲の実況は、「全体」の中に勝負の決め手となる「部分」をどう織り込むかが大切
・言葉によるカットの切り替えは、聞く側の想像を大きくかきたてる
・緩急のあるプロ野球、テンポ重視の高校野球ではおのずと実況の方法が変わる
・目の前の試合は、個人としてどんな重みがあり、チームとしてどんな価値わきまえておくことが大事
・勝負どころの「濃い」ときには実況を、「薄い」ところでは実況から離れる
・「ここまでご覧になっていかがですか?」のような”裸の質問”はしない。
・実況アナウンサーに求められることは「ポジティブ」でいること。
事前に調査し、戦況を瞬時に捉え、視聴者に的確な情報を伝え熱量を届ける。自分の仕事にも通じる考え方が盛り沢山。勉強になる一冊でした。
さて、甲子園とオリンピックの夏がやってきます。この本を読んで、スポーツ中継が2倍、いや3倍楽しめること間違いなし。プレー中や勝負どころでない場面ですら、実況のテクニックを満喫できるはずですから。