らしさとは?を楽しく学ぶ

ウル虎の巻

-九の巻-社内の人が、一番信じてなかった。

「ブランディングをやった。なのに、何も変わらない気がする。」

そう感じたことはありませんか。サイトをきれいにして、キャッチコピーを作って、名刺も刷り直した。でも、何かが足りない。問い合わせの雰囲気も、社員の動き方も、あまり変わっていない気がする——。

その「何か」の正体を、エルくんが納品後に気づきます。

「なんか変わった気がしないんですよね」

納品から三週間が経ったころ、クライアントの腑落 信二さんから連絡が来た。サイトもきれいになったし、コピーも気に入っている。でも、なんか変わった気がしない——そんな言葉だった。

エルくんは首をかしげた。サイトは間違いなくよくなっている。コピーだって、何度もヒアリングして、丁寧に言葉を選んだ。それでも腑落さんは「うまく言えないんですが、なんか実感がないというか」と続けた。

エルくんは気になって、翌日、腑落さんの会社に足を運んだ。

受付で、聞こえてきた

エントランスに入ると、受付のスタッフが来客の対応をしていた。来客が「こちらって、どんなことをされている会社なんですか?」と尋ねると、受付スタッフは「えっと……企業の経営支援とか、新規事業の企画とか、コンサルティングみたいなことをいろいろやっていて……」と答えた。

エルくんは、そこで足が止まった。新しいサイトには、ちゃんと書いてある。会社のコンセプトも、強みも、どんな人に向けた会社なのかも。でも今、受付の人はそれを一言も言えていない。

……あ。

「公開したから、知ってるはず」

事務所に戻ったエルくんは、社長に報告した。

エルくん
エルくん
腑落さんの会社、受付の方が会社のことをちゃんと説明できてなかったでござる。サイトはしっかり作ったのに、なぜでござるか
舵取社長
舵取社長
今回つくったブランドコピー、社員に説明したか
エルくん
エルくん
……公開したから、知ってるはずでござる
舵取社長
舵取社長
知ってると、使えるは違う
エルくん
エルくん
……でござるか?
舵取社長
舵取社長
自分の会社のことばを、自分の口で言えるようになるには時間がかかる。公開しただけでそうなると思ったら、甘い
ベイ・ハクライ
ベイ・ハクライ
インターナル・ブランドアライメントなしにエクスターナル・コミュニケーションをデプロイするのはブランドエクイティのミスアロケーションでごじゃる

(誰も拾わない)

エルくん
エルくん
……拙者、納品して終わりだと思ってたでござる

外に届ける前に、内側を通る

ホウホウ長老
ホウホウ長老
腑落さんの会社の社員は、新しいコピーを見たとき、何と言っておったか
エルくん
エルくん
……聞いてなかったでござる
ホウホウ長老
ホウホウ長老
そうじゃろうな。多くの場合、そこが抜けるのじゃ
エルくん
エルくん
社員が知らなかったということでござるか?
ホウホウ長老
ホウホウ長老
知っていても、腑に落ちていないことがあるのじゃ。「この言葉は自分たちのことだ」と思えていない社員が、お客さんにそのことばを使えるわけがないのじゃ
エルくん
エルくん
……たしかに。拙者だって、自分が信じてないことは言えないでござるな
ホウホウ長老
ホウホウ長老
ブランドとは、外に届けるものじゃ。でも、外に届ける前に、必ず内側を通らなければならない。社員が「そうそう、これがうちだ」と思えたとき、はじめてことばは動き出すのじゃ
エルくん
エルくん
……社内の人が、一番信じてなかった、でござるな

では、どうすればよかったか

エルくん
エルくん
じゃあ……納品のときに、社員にも説明すればよかったでござるか?
ホウホウ長老
ホウホウ長老
それも大事じゃ。だがもっと前の話でもあるのじゃ
エルくん
エルくん
もっと前、でござるか?
ホウホウ長老
ホウホウ長老
コピーをつくるとき、社員の声は入っておったか?
エルくん
エルくん
……社長へのヒアリングはしたでござるが、社員には聞いてなかったでござる
ホウホウ長老
ホウホウ長老
そこじゃ。社長だけが考えたことばは、社長にしか刺さらないことがある。社員の口癖、現場でよく使う表現、お客さんから言われてうれしかった言葉——そういうものが混ざっているほど、社員は「これは自分たちのことだ」と感じやすいのじゃ
エルくん
エルくん
つくる前から、社内を巻き込む……でござるな
舵取社長
舵取社長
そうだ。ブランドは社長のものじゃない

最後に

ホウホウ長老
ホウホウ長老
エルよ。腑落さんの受付の方が言葉に詰まったのは、その人のせいではないのじゃ
エルくん
エルくん
……拙者が、社内に届けていなかったでござるな
ホウホウ長老
ホウホウ長老
うむ。外向けのことばは、内側の確信から生まれる。社員が自分の言葉でらしさを語れるようになったとき、はじめてブランドは動き出すのじゃ
エルくん
エルくん
「あなただから」って言ってもらうのは、まず社内の人間から、でござるな
ホウホウ長老
ホウホウ長老
そうじゃな

この記事のまとめ

社内の人が、一番信じてなかった。

サイトをきれいにして、コピーを作って、公開した。それだけでは、まだ半分です。

外に届けることばは、先に内側を通らなければなりません。社員が「これは自分たちのことだ」と感じていなければ、お客さんの前でそのことばを使えない。使えないことばは、伝わらない。

ブランドをつくるとき、社内を巻き込むのは「内輪向けの作業」ではありません。社外に届けるための、最初の一歩です。社員の口癖、現場の言葉、お客さんに喜ばれてきた表現——そこにらしさの原石があり、それが混ざってはじめて、社員が自分のものとして語れることばになります。

私たちは、ことばをつくるとき、できるだけ多くの社内の声を聴くようにしています。社長だけのことばではなく、その会社にいる人たちのことばを、一緒に見つけたいと考えているからです。

よくある質問

キャッチコピーを作ったのに、社員が使ってくれません。
多くの場合、つくる過程に社員が関わっていないことが原因です。社員の口癖や現場の言葉が入っていることばほど、「これは自分たちのことだ」と感じてもらいやすくなります。また、公開後に社員向けの説明の場を設けることも有効です。
社内向けの説明は、どんなふうにすればいいですか?
「なぜこのことばになったか」の背景を共有することが大事です。完成物だけ見せると「なんかかっこいいね」で終わりやすい。どんなヒアリングをして、どんな言葉を選んで、なぜこの表現になったかを伝えることで、社員の納得感が変わります。
社長と社員でブランドへの温度差があります。
よくあることです。温度差は、社長だけが考えてきた時間の分だけ生まれます。社員を早い段階でヒアリングに巻き込む、社員の言葉をコピーに反映するなど、「自分たちがつくった」という感覚を持ってもらえる工夫が効きます。
-八の巻- 拙者は、このプリンがいいのでござる。 -十の巻- 紹介で来る人と、検索で来る人は、なぜ違うんだろう。

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制作・監修

デザインスタジオ・エル

ブランディングデザイン会社|長野

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