らしさとは?を楽しく学ぶ

-番外編 参-伝わると、根付くは、違うのじゃ。
長老が、繰り返す理由。
静かな午後だった。社長は外出中で、ハクライはどこかへ消えていた。事務所にいるのはエルくんと長老だけで、珍しく何の話もなく、ただそれぞれのことをしていた。
エルくんは冷蔵庫からプリンを取り出して、スプーンを一口運んで、ふと思ったことを口にした。
エルくん
なぜ長老は、いつも同じことを繰り返すのでござるか
エルくん
らしさ、等身大、あなただから——毎回同じ言葉が出てくるでござる。もう聞いたでござる、と思うこともあって
ホウホウ長老
怒っておらん。……少し、昔のことを思い出しておったのじゃ
長老は窓の外を見た。しばらく黙っていた。
ホウホウ長老
昔、ある会社を手伝ったことがあるのじゃ
ホウホウ長老
小さな印刷会社じゃった。丁寧な仕事をする会社で、社長は職人気質の人間で、紙や印刷に対するこだわりも強かった。わしはそこの言葉を整理する手伝いをしてな
ホウホウ長老
『紙の声を聞く』じゃ。それがその会社のらしさだった。社長もそれを聞いて、『そうですね、これがうちらしい!』と言っておった
ホウホウ長老
わしはその仕事が完了したあと、関係性を維持しようとしなかった。その言葉がその後どうなったか、確かめなかった。数年後にその会社のことを聞いたとき、誰もその言葉を覚えておらんかった。社長でさえもじゃ
エルくんは、スプーンをそっと置いた。
ホウホウ長老
忘れたのではないと思うのじゃ。根付かなかったのじゃ。一度聞いた言葉は、記憶には残る。でも、記憶と"らしさ"は違うのじゃ
ホウホウ長老
記憶は、思い出すものじゃ。でも"らしさ"は、考えなくても出てくるものじゃ。繰り返すことで、はじめて血肉になる
ホウホウ長老
一度伝えれば届くと思っておった。それがわしの失敗じゃ。言葉は、一度では届かない。届いたように見えても、根付いていないことがある
ホウホウ長老
うむ。うるさいと思われても、構わんのじゃ。大事なことは、繰り返す
しばらく、二人とも黙っていた。エルくんはまたスプーンを手にとった。プリンの底のカラメルまで来ていた。
エルくん
ブランディングも、そういうことでござるよね
エルくん
一度Webサイトを作って、一度言葉を整えて、それで終わりじゃない。伝え続けることで、はじめてらしさになる。育てるって、そういうことでござるな
ホウホウ長老
うむ。そういうことじゃ(わかってきたではないか…)
そこへ社長が戻ってきた。二人の様子をちらっと見て、何も聞かずにコートを脱いだ。
エルくん
なぜ長老はいつも同じことを繰り返すのか、という話でござる
舵取社長
そうか(すこし、たくましくなってきたな)
そう言って、自分のデスクに向かった。
その日から、エルくんは「らしさ」という言葉を聞くたびに、あの静かな午後のことを少し思い出すようになった。長老がなぜ繰り返すのか、もう聞かなくてもわかる気がした。
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制作・監修
デザインスタジオ・エル
ブランディングデザイン会社|長野
デザインスタジオ・エルは「超えるをつくる」を合言葉に「らしさ」をかたちにする、ブランディングデザインの会社です。
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