thee #12『不在の塔』
長野市の演劇ユニット・theeの第12回公演『不在の塔』を観てきました。
チラシデザインさせてもらっている分、いくぶんか予備知識をもってのぞむのですが、今回は演出の長峯さんから「創作難易度が高い」と聞いていました。実際、事前にお邪魔した稽古場でもちょっと緊張感高めに感じました。今までにない事前情報だったので、どんなストーリー、どんな演出、どんな演技がなされるのか、よりワクワク感が。
会場のモリヤホールははじめて。会場はみるみるうちに満席。昼はさらに混んでいたらしい。すごいなー。ch.books CAFEの「不在の塔特製ドリンク」がめちゃくちゃおいしくて、冷えた体を温めつつ着席。毎回ズズサウルス木下さんが当日パンフを作っていてそれを見るのも楽しみで、なんか今回もぶっとんでいて、いろいろ仕組まれているんだろうなと上演前に血眼になって眺めてました。とりあえず、誰がどの区長かは覚えておいたほうがいいかな…と思い頭に叩き込んでみた。裏面の広告も当然あやしい。こうなるとこの不在の塔特製ドリンクもただおいしいだけじゃない、何かある。
そわそわしているうちに19:00になって開演。おなじみのメンバーの声が轟くと、一瞬でtheeワールドに。前方のステージだけじゃなく座席周りの通路も舞台の一部になるから、こちら客席も民衆に仕立て上げられているも同然。当日パンフに書かれてる「回覧」の文字がじわじわ効いてくる…。
登場人物は、著名な建築家先生と、その弟子である夢見る建築家、そして6人の区長。序列ある区長たちは、塔が必要か不要かをめぐって、くっついたり離れたり、足したり引いたり、上になったり下になったり…。立場がかわると価値観もあっさり変わる。現実世界でありうることをちょっと意表を突く設定で表現し、巧みに共感づけるのはtheeらしくて好き。高いところが好きなのか、人の上に立つのが好きなのか、有名な建築家が作るから価値があるのか、カネや地位のために高いところを目指すのか…。とにかく、高いところめがけてそれぞれの想いは複雑に絡み合う。
でも、高いところは危ない。ラストに向かって畳みかけるように、タイトルの「不在の塔」は突きつけられる。おおぉ…。悲喜劇の中の深み。人間関係がこんなにも複雑怪奇に絡み合うなかでの「不在」。いやこれは、うまく言葉で言い表せないんですが、すごいんじゃないですか!?ちょっとね、終わったあと少し放心状態というか、空っぽ感というか…刻まれました。
誰がどの区長かを覚えたのが、逆に裏をかかれた感やられた感。程よく頭が混乱し、登場人物がそれぞれおだてたり誘ったりそそのかされまくる激しい移ろいがツボにハマってしまいました。創作難易度が高いということでしたが、全体像も枝葉もはっきりと描かれ、まったく淀みのない素晴らしいパフォーマンスに映りました。難しいものが難しいように見えないって名手ですよね(そういえば作中にでてきた野球ネタがこれまたツボ)。ストーリーも演出も演技も素晴らしかったです。結末を理解したうえでもう一度見てみたい!