NoteWebディレクター・ハラヒロシのブログ

なぜこの店で買ってしまうのか

なぜこの店で買ってしまうのか―ショッピングの科学

「買いゴコロ」をくすぐる、「売りゴコロ」の秘訣! 本書は、進化しつづける買い物文化を小売店を調査しながら的確に把握し、「フォーチュン」100社に挙げられる優良クライアントの数々を小売業界の第一線へと導いてきた究極のノウハウ「ショッピングの科学」を紹介するものです。顧客の購買行動をつぶさに観察し、商品化計画から陳列・販売にいたる小売りの店づくりについてのアドヴァイスをわかりやすく提供しています。徹底したフィールドワークで売れる店づくりの秘訣を明かす本書は、売る側のあなたも、買う側のあなたも、「なぜ買ってしまうのか」、そのしくみに思わず膝をたたくこと請け合いです。

第二部「ショッピングのメカニズム」が特に面白かったです。「入口と移行ゾーン」の項では、店舗の入り口に重要なものをもってきてはいけない理由として、調査に基づく以下のような考察を展開。

  • 駐車場から店内に向かう人は、誰もが早足。
  • 速く歩いているときは視野が狭くなる。ウィンドウのメッセージは大きく、太く、短く、シンプルに。でなければ邪魔なだけ。
  • 店の敷居をまたいだとたんに急停止する人はいない。
  • 店に入ると慌ただしく自分を適応させようとする。目を店舗の明るさや広さに調節し、音やにおいを分析し、店内が暑いか寒いか判断する。つまり実際には店舗の中にいるが、あと何秒かしなければ本当に店にいる状態にはならない。
  • よって、この移行がなされる前に客が通るゾーンに何を置いても役に立たない可能性が高い。買い物客には滑走路が必要

これに対して、移行ゾーンをどう利用したらいいかも解説していて、なるほど~と思わせます。他にも「人間には手が二本しかないことを考える」「買い物客は人間で、人間らしく動き回る」「固定観念で販売することの危険性」「男性と女性のショッピングの相違点」「子どもの気を紛らわせるには」「待ち時間短縮法」「ショッピングの鍵―感触と試用」…など、まさに帯にある「買いゴコロ」をくすぐる、「売りゴコロ」の秘訣が書かれています。また、店内の看板など、買い物客を陳列商品に引き付けるためのデザインに関することについても、人間が本来持つ行動メカニズムを手掛かりに説得力ある見解がなされていて大変勉強になりました。

小売業者でなくても売り手と買い手の視点を知ることは有意義ですし、マーケティング、経営、UX、分析…といった観点で学びが多い本。これ読んだら確実に、スーパー、家電量販店、コンビニ、書店、衣料品店など普段行くお店での見方(入り口、陳列、買い物かごやレジの位置など)ががらりと変わりそう…。