NoteWebディレクター・ハラヒロシのブログ

中堅官僚プロジェクトの元祖、石田三成

大河ドラマ「真田丸」で、関ヶ原の戦いがあっという間に終わったことが話題になっていますが、今回のドラマでの石田三成の役どころは大変興味深かったです。これまであまり石田三成の印象はよくなかったですが(教科書は政治的な勝者を中心に書かれている@大学でまなぶ日本の歴史)、豊臣家のために忠義を尽くしたのだなぁと、その点について見方がかわりました。
日本を創った12人さて、僕が好きな本「日本を創った12人」。日本の独自性はいつ、誰によって、いかにして創り上げられたのかという切り口で12人が紹介されていますが、石田三成のチョイスは普通に考えたら意外。著者はこの中に石田三成を「中堅官僚プロジェクトの元祖」として取り上げています。それまでは巨大な力を持った偉くて独裁的な人物が大きなプロジェクトを動かしてきたけれども、”偉くない人が企画推進する日本型プロジェクト・メーキング(例:明治維新、太平洋戦争、新幹線の建設、日本万博博覧会など)”は、その源泉を探ると石田三成に突き当たるといいます。
秀吉は、安定した行政組織を築くため「五大老・五奉行」を任命しました。著者はその立場を現代の企業組織にたとえた場合、それぞれの役職を以下のように表現しています。
豊臣秀吉:創業者社長
<五大老=意思決定機関>
徳川家康:大株主の副社長
前田利家:専務取締役
毛利輝元:吸収合併された会社の元オーナーで常務格
上杉景勝:同上
宇喜多秀家:早くに合併した中堅企業の二代目で秀吉社長の養子になった若者
<五奉行=執行機関>
前田玄以:渉外部長兼官庁担当
浅野長政:人事部長
増田長盛:総務部長
石田三成:社長室長兼企画部長
長束正家:経理部長
こうすると、家康からみれば三成など取るに足らない小物。そんななか、5人いる部長のなかでも4番目の三成は創業者一家を守ろうと立ち上がった。この企てを遂行したことは、地位のない者が大きなプロジェクトを実行することを実証した、と説きます。
その後、関ヶ原の戦いに至るまでのプロジェクト・メーキングについてはこれも興味深くこの本のなかで描かれています。1.大義名分を立てる。2.スポンサーを冠にする。3.実務者ネットワークで有力大名を乗せる。4. 象徴的な人物を総大将に祭り上げる。
これは例えば、Web制作をクライアントと”共創”するためのヒントになるかもしれない、と思いました。
最終的に、三成の描いた名脚本は、愚演に終わってしまいましたが、このプロセスがよい手本となり現代に生かされている。そしていまもこの手法は有効だから、手法を学ぶと同時に失敗も学ぶとよいと締めくくっています。三成の失敗は、本書やドラマなどで表現されています。「中堅官僚プロジェクトの元祖」という視点でみたら、とても面白いと思います。