さよならインターネット
さよならインターネット 家入 一真 (著)
かつて自由で聖域の存在であったインターネットは、いまでは”警備員”ばかりの閉ざされた世界になっている。まもなく消えるであろうインターネットの輪郭。これからやってくる世界はどんなものなのだろうか。
1998年。はじめてHTMLファイルをFTPでアップし、ブラウザ(Netscape)に表示されたときの感動と興奮はいまでも忘れられません。僕も家入さんと同時代に個人サイト全盛期を過ごしてきたので、”インターネット=Webサイト”と捉え、その内側に自ら入っていくこと、そこから何かを発信していくことで広大な世界に飛び出していく感覚に、特別感を抱いていました。”どんなレベルの内容であっても、ホームページは一つの完成した世界”、”自分の居場所ができた”、”自分の世界を作れた”…とてつもなく共感できるのと同時に、いまだに個人サイトのごとく情熱を注いでいる僕は、いまの時代ではかなりマイノリティなのかも…と気付かされました。今でも当時と同じ輪郭をはっきり意識して接している自覚があるから。
賞賛すべき世界という感覚を残す一方で、居心地の悪さを感じる場所になっていることも確かにあって、僕自身もSNSで情報を積極的に発信したり、ブログを拡散することもなくなって、おとなしく過ごしているというのが現状です。すべてを満たしていたインターネットの”ワクワク感”から侵食する”窮屈さ”についてこの本のなかで顕在化されました。インターネットの世界はむしろ縮小している。自由さゆえの不自由さから生まれた救済サービスは情報を小さく切り取っていって、結果自分の世界を狭めている。確かにそうだと思います。
輪郭を確認する。本書は決してネガティブな結論ではなく、ポジティブなヒントが記されています。「エクスターネット的」という概念はとてもおもしろいと思うし、これは僕自身も、エルとしてもこれからやっていこうとしていること。インターネットの輪郭を俯瞰しながら、自分なりに実践できることはやっていきたいな、と思いました。