thee第7回公演『ブリザリアン―不食者―』鑑賞
thee第7回公演『ブリザリアン―不食者―』観てきました。今回の作品は<着想:フランツ・カフカ『断食芸人』>ということで、訳文とあらすじから得られる共通点をおさえながら、これをどんな演出で表現していくのか、いままでとはまた違った一面が見られるのではと楽しみにしていました。
退屈に暮らす6人の村人たち ☓ 断食芸で対抗しようとする2人の若者。寄り合いで2人に対する裁きの時間がはじまる。
演出は最初から最後までthee印テンコ盛りで、いくつかのシーンに分けられた登場人物たちの、たわいもない掛け合いが徐々に全体の世界観を作っていき、全員出揃ったところで一気にバチバチとぶつかり合うエネルギーが放出。エキサイティングでエンターテイメント感があり、畳み掛けるようなブラックユーモアが会場を笑いの渦に。いいぞいいぞ、これぞtheeの醍醐味。
…ところがですよ。ラストを迎えるころにはなんと真逆の無常感が…。なんだいったいこの対比。振り返ると、許す/許さない、考える側/考えない側、生きるために食べる人間/生きるために食べない人間、熱狂/興醒、できる/できない、なりたい/なれない…うまく表現できませんが、冒頭から刷り込まれていた無念さのようなものががじわじわと効いてきて、グサリとくる感じがありました。見終わったあとの引っかかりや余韻があるところに、単にストーリーや演出が良いというだけでない、theeの深さがあるのかなと思います。
役者さんのほとんどはtheeで何度も観ているおなじみの方々でしたが、キャラクター設定も強烈でハマり度も高く、発するセリフの一言ひとことや立ち振る舞いがとても印象的。記憶に残る90分。濃厚すぎる時間でした。
※写真は7月9日の通し稽古より。