らしさとは?を楽しく学ぶ

ウル虎の巻

-番外編 六-きれいに見せれば、選ばれるのだろうか?

社長の、失敗の話。

打ち合わせから戻ったエルくんは、上機嫌だった。

エルくん
エルくん
社長!クライアントから要望をもらったでござる!
舵取社長
舵取社長
なんだ
エルくん
エルくん
『もっとおしゃれにしてほしい。競合のサイトみたいにしたい』とのことでござる!方向性が明確でやりやすいでござる!

社長の顔が、少し曇った。

舵取社長
舵取社長
競合のサイトを見たか
エルくん
エルくん
見たでござる。たしかにすごくおしゃれでござった。クライアントのサイトも同じくらいきれいにすれば——
舵取社長
舵取社長
待て
エルくん
エルくん
……?
舵取社長
舵取社長
そのクライアントの強みは何だ
エルくん
エルくん
……ヒアリングで出てきたのは、地道に積み上げてきた実績と、担当者が変わらないという安心感、でござる
舵取社長
舵取社長
それと、競合のおしゃれなサイトは、合うか
エルくん
エルくん
……合わない、かもしれないでござる……
舵取社長
舵取社長
そうだろう

社長は椅子を引いて、座った。いつもと違う間があった。

舵取社長
舵取社長
昔、賞を取ったことがある
エルくん
エルくん
賞、でござるか
舵取社長
舵取社長
デザインの賞だ。業界誌にも載った。自分でもきれいにできたと思った。クライアントも喜んでいた
エルくん
エルくん
……それは、よかったのではないでござるか
舵取社長
舵取社長
公開して半年後、クライアントから連絡が来た。問い合わせが減った、と
エルくん
エルくん
……賞を取ったのに、なぜでござるか
舵取社長
舵取社長
きれいだったが、その会社らしくなかった。今まで来てくれていた客が、サイトを見て『変わってしまった』と感じた。新しい客は来なかった。おしゃれすぎて、近寄りにくくなっていた
エルくん
エルくん
でも、賞を取るくらいのデザインだったでざるよな
舵取社長
舵取社長
でも、そのクライアントには間違っていた
エルくん
エルくん
……どういうことでござるか
舵取社長
舵取社長
受け取る人のためじゃなく、作った自分のためのデザインだった。きれいに作りたかった。クライアントのらしさより、自分の腕を優先した
舵取社長
舵取社長
デザインは目的じゃない。届けるための手段だ。きれいと、正しいは、違う
エルくん
エルくん
……では、今回のクライアントに、おしゃれにするのは違うと伝えるでござるか?
舵取社長
舵取社長
その前にやることがある
エルくん
エルくん
……なんでござるか
舵取社長
舵取社長
『おしゃれにしたい』の裏に何があるかを、聴いてこい。なぜそう思ったのか。競合を見てどう感じたのか。何が不満で、何を変えたいのか
エルくん
エルくん
聴く、が先でござるな
舵取社長
舵取社長
要望をそのまま叶えるのが仕事じゃない。要望の奥にある本当の課題を見つけるのが仕事だ
エルくん
エルくん
……きれいにすることが目的じゃなくて、届けることが目的でござるな
舵取社長
舵取社長
そうだ
エルくん
エルくん
そのために、まず聴く。そのクライアントにとっての『正しい』を見つけてから、きれいにするでござるな
舵取社長
舵取社長
わかってきたじゃないか

翌日、エルくんはクライアントのところへ出かけた。今日は提案を持っていかない。聴きに行く。

打ち合わせから戻ったエルくんは、メモをびっしり書いた巻き物を広げた。「おしゃれにしたい」の裏には、「古くさく見られているのが嫌だ」「若い世代にも知ってほしい」という気持ちがあった。らしさを壊したいわけじゃなかった。らしさを保ちながら、もう少し親しみやすくしたかっただけだった。

それは、おしゃれにすることとは、少し違う話だった。

聴かなければ、わからなかった。

この記事のまとめ

きれいに見せれば、選ばれるのだろうか??

きれいなデザインは、悪くありません。でも、きれいにすることが目的になったとき、デザインは届かなくなります。

「もっとおしゃれにしたい」という言葉の裏には、必ず別の何かがあります。古くさく見られたくない、新しい層に届けたい、今のサイトに自信が持てない——その気持ちを聴かずに、見た目だけ変えても、らしさは伝わりません。デザインは目的ではなく、届けるための手段です。まず聴くことが、正しいデザインへの最初の一歩です。

よくある質問

Webサイトを新しくしたいのですが、何から始めればいいですか?
まず「なぜ変えたいのか」を言葉にすることから始めます。古くさく見られている、問い合わせが来ない、今のサイトが自分たちらしくない——その気持ちの中に、本当に解決すべき課題があります。見た目を変えることが目的ではなく、あなたの会社が正しく伝わるようにすることが目的です。
きれいなデザインは、やはり必要ですか?
必要です。ただし、順番があります。そのクライアントにとって「正しい」方向が決まってから、きれいにする。逆にすると、見た目は整っても伝わらないものができあがります。きれいさは、らしさを届けるための手段として機能したとき、はじめて意味を持ちます。
今のサイト、なんとなく古くさい気がしています。全部作り直すべきですか?
必ずしもそうではありません。「古くさい」と感じる理由を掘り下げると、デザインの問題ではなく、伝えている内容や言葉がズレてきているだけのことがほとんどです。まず何が「古くさく見える」原因なのかを整理してから、どこを変えるかを決めた方が、無駄なく改善できます。
-番外編 五- で、どっちが伝わったんだろう。

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制作・監修

デザインスタジオ・エル

ブランディングデザイン会社|長野

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