らしさとは?を楽しく学ぶ

ウル虎の巻

-番外編-で、どっちが伝わったんだろう。

エルくんとハクライ、はじめての対決。

舵取社長
舵取社長
クライアントへの提案書を書いてこい。テーマは『なぜWebサイトをリニューアルすべきか』だ。二人で別々に書け
エルくん
エルくん
二人で、でござるか! 望むところでござる!
ベイ・ハクライ
ベイ・ハクライ
コンペティティブ・プロポーザルでごじゃるな。ベストプラクティスを見せてやるでごじゃる。エルには負けん!

二人は背中合わせに座り、それぞれ書き始めた。

エルくんの提案

一時間後。エルくんが立ち上がった。

エルくん
エルくん
完成でござる! 聞いてくだされ!

エルくんは巻き物を広げ、朗々と読み上げた。

エルくん
エルくん
『顧客の心理に到達するこの新しい意匠と企画で、現在抱えている隘路を解消いたすでござる。背景や問題点を明確に、かつ最終目的を設定し、顧客に対し好意的感情を醸成する企業価値の強化と利益向上を目標と致すでござる。構造は平易にし、誰にとっても使いやすく迷わない設計を考慮したでござる。進行計画については十月末日までに区切りよく——』
舵取社長
舵取社長
待て
エルくん
エルくん
まだ続きがあるでござる!
舵取社長
舵取社長
いい
エルくん
エルくん
……でござるか

ハクライの提案

ベイ・ハクライ
ベイ・ハクライ
では拙者でごじゃる。プロフェッショナルなプロポーザルをご覧いただくでごじゃる

ハクライはタブレットを取り出し、スライドを映しながら読み上げた。

ベイ・ハクライ
ベイ・ハクライ
『ステークホルダーにポジティブフィーリングをギブし、コーポレートバリューをエンハンスするでごじゃる。バックグラウンドやプロブレムをクリアにしてゴールをセッティングし、ストラクチャーはシンプルに、イージーでストレスフリーなユーザビリティをアチーブし、ユーザーのインサイトにリーチするデザインとプランニングにより、ボトルネックはすべてナッシング。サイトのローンチはハロウィーンにアジャストするとベストタイミングでごじゃる』
舵取社長
舵取社長
……
ベイ・ハクライ
ベイ・ハクライ
いかがでごじゃるか

社長の一言

舵取社長
舵取社長
同じだ
エルくん
エルくん
え?
ベイ・ハクライ
ベイ・ハクライ
え?
舵取社長
舵取社長
どっちも伝わらない。同じだ
エルくん
エルくん
で、でも拙者は日本語で書いたでござる!
ベイ・ハクライ
ベイ・ハクライ
拙者はロジックが完璧でごじゃる!
舵取社長
舵取社長
関係ない

二人は黙った。

長老が読む

そこへ長老が現れ、無言で二枚の提案書を手に取った。しばらく読んで、静かに口を開いた。

ホウホウ長老
ホウホウ長老
エルよ。お前の提案を、平易に言い直すとこうじゃ。『お客さんの気持ちに寄り添い、課題を整理して、使いやすいサイトを作ります』
エルくん
エルくん
……それで合ってるでござる
ホウホウ長老
ホウホウ長老
ハクライよ。お前の提案を、平易に言い直すとこうじゃ。『お客さんの気持ちに寄り添い、課題を整理して、使いやすいサイトを作ります』
ベイ・ハクライ
ベイ・ハクライ
………………
ベイ・ハクライ
ベイ・ハクライ
……拙者と、エルは、同じことを言っていたでごじゃるか
ホウホウ長老
ホウホウ長老
そうじゃ。言っている中身は同じじゃった
エルくん
エルくん
じゃあ、何が違ったんでござるか
ホウホウ長老
ホウホウ長老
受け取る人のことを、考えていなかった。それだけじゃ

言葉は、誰のためにあるのか

エルくん
エルくん
……拙者、難しく書いたほうが、ちゃんとした提案に見えると思ってたでござる
ベイ・ハクライ
ベイ・ハクライ
……拙者も、専門用語を使ったほうが、信頼されると思っていたでごじゃる
ホウホウ長老
ホウホウ長老
どちらも、書いた自分のためになっておるな。読む相手のためではなく
エルくん
エルくん
……でござるな
ベイ・ハクライ
ベイ・ハクライ
……でごじゃるな
ホウホウ長老
ホウホウ長老
言葉は、書いた人のためにあるのではない。受け取る人のためにあるのじゃ

しばらく、三人とも黙っていた。

舵取社長
舵取社長
書き直してこい。二人とも
エルくん
エルくん
でござる……
ベイ・ハクライ
ベイ・ハクライ
でごじゃる……

エルくんとハクライはならんで提案書を書き直した。いつもは張り合う二人が、珍しく静かに、同じ方向を向いていた。

長老は窓際でお茶を飲みながら、何も言わなかった。ただ、少しだけ目を細めた。

この記事のまとめ

で、どっちが伝わったんだろう。

難しい言葉を使うことと、伝わることは別の話です。

日本語でも、横文字でも、受け取る人のことを考えていなければ、どちらも届きません。言葉は、書いた人が満足するためにあるのではなく、読んだ人に何かが伝わるためにあります。

「ちゃんとした文章に見せたい」「専門的に見られたい」——その気持ちは自然です。でも、言葉が難しくなるほど、伝わる範囲は狭くなっていきます。受け取る人の言葉で書くこと。それが、届く言葉の出発点です。

よくある質問

Webサイトの文章が難しいと言われます。どうすればいいですか?
まず「このページを誰が読むか」を一人、具体的に思い浮かべることから始めます。その人が普段使っている言葉で書き直すだけで、伝わり方が変わります。専門用語は「知っている人には省略」「知らない人には翻訳」が基本です。
専門用語を使わないと、信頼されないのではないですか?
逆のことが多いです。難しい言葉を使わなくても説明できる人の方が、本当に理解していると思われやすいです。「わかりやすく話せる専門家」は、それ自体が信頼になります。
社内の文章がいつも難しくなってしまいます。
書いた本人は「当たり前」と思っている言葉が、読む側には難しいことがよくあります。社内の文章こそ、業界外の人に一度読んでもらうと、どこが伝わっていないかが見えやすくなります。
-十の巻- 紹介で来る人と、検索で来る人は、なぜ違うんだろう。

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制作・監修

デザインスタジオ・エル

ブランディングデザイン会社|長野

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